きっと、大丈夫♪.
押見素子、トールペイントの世界.
「押見先生、大好きです.繊細かつ大胆な作品と人柄がたまりません.レッスンは楽しく、トールの基本を始め、押見先生独自の技法を“おしみ語”で・・・、とても気さくに、でも本気で向き合って下さることに感謝します.」仙台クラス在籍SKさんからのメッセージ.
生徒さんからこんな素敵なメッセージをいただける先生って、何か気になります.
アクリル絵の具を駆使して描かれる花、風景、人物・・・.穏かな空気感、たおやかに流れる時間・・・.その作風と共にトールペイント界では揺るぎのない存在感を築く押見素子(神奈川県在住)さんです.
聞いてみました.皆さんが知りたいこと.
例えば、押見さんの“これまで”.例えば、押見さんの“今・現在”. 押見さんの回答を全文掲載いたします.行間から溢れ出す意外とシンプルなペイントへの思い、押見素子さんの文と共にお楽しみ下さい.
押見さん、トールペイントを始めたきっかけを教えて下さい.
シアトルに駐在中、日本人のママ友が習い始めたトールを一緒にやろうと声をかけてくれました。
まだ下の子供が2歳になっていなかったし、始めたら夢中になってしまうという“確かな予感” (笑)があったので一度は断りましたが、娘がプレスクールに慣れてきた頃、初めて筆を持ちました。案の定、その日から寝る時間も忘れるほどにハマってしまいました(^^;
押見さんの作品の魅力はどの辺りにあると思いますか?ご自分では少々言い辛いかもしれませんが(笑)
技術的に高いものがあるわけでもなく、魅力といえるものかどうかも全く自信はありませんが、"私らしさ"と言い換えさせていただけるなら・・・
はっきりと主張したもの、原色や激しい色は苦手で、穏やかで優しいあいまいな色が好きなので、そしてまた、ふわふわと薄い色を行ったり来たり重ねている時間も大好きなので、作品もいつのまにか、そんなふうに ふんわりとした感じのものに仕上がっていきます。
生徒さんたちから「たくさんあってもうるさくなくてジャマにならず(笑)どこにでも自然になじむからいいよね♪」「見ていると、心の中に風が流れるような気がして落ち着く」「なぜか自分の昔のことと重なって 大切なものに思える」などと、嬉しい言葉をいただいたりするときは、私の思いが確かに伝わっているのを感じてしあわせに思う瞬間です。
描画の技法について教えてください.
ウオッシュ技法が好きです。
弱い色が重なりあうことで、深みのある優しい色になったり、味わいのある渋い色になったりしていく そのひと筆ごとの変化の瞬間、いつもドキドキわくわくしています。水の優しさに頼って、色をぼかしたり輪郭をあいまいにしたり、逆にシャープに見せたいときも、筆の力の入れ方ひとつで自由になる感じが気に入っています。なにより、失敗した!どうしよう!と焦る生徒さんたちに、「大丈夫♪」って、自信をもって言ってあげられるのが嬉しいです。
薄くても弱くても、積み重ねてきた"今まで"を否定することなく、'他'も'私'も活かし合いながら、いつのまにか調和して穏やかな世界を作っていける、人生にも重なるような、そんな優しくてあたたかい技法だと思っています。
押見さんの作品づくりにおけるコンセプトを教えて下さい.
自分の生きてきた中で、心に残った感動や思い出、忘れたくないことや大切にしたいもの などを、色や風景、自然の中の花や葉に重ねて表現できたらいいな、と思って描いています。
辛かった日々には、本当に失いたくないものが見えました。だからこそ、日常のなにげないことを幸せに思える自分にもなれたと思います。オリジナルを描くときはいつも、その頃の思いが、深いところで作品作りの基になっていると思います。
また、生徒さんたちや見てくださる方が、ご自分の思いを重ねながら、その思い出と好きなようにリンクできるように、といつも思っています。
作品制作のプロセスを教えてください.
たとえば「バラの作品」を依頼されたとき、正面からバラを描く、というよりは、バラに託してなにを描こう?と考えます。なぜか私は、まずそこに'思い'がないと、構図も色もなんにも浮かんでこないのです(^^; なので、とりあえず自分のポケットの中から、伝えたい思いや風景を探して色のイメージを考えることが多いです。 その色も 描き進めるうちに、どんどん変わっていってしまうことがほとんどですが(笑)、その変化の過程がなんだか楽しくて・・・。 ついつい夢中になってしまい、記録しなければいけない生徒さん用のインストラクションのメモをとり忘れてしまうこともあって、後で汗をかいたりしています(笑)
ウオッシュ技法によって描かれたオリジナル作品.
押見さん、続いては皆さんが更に知りたいこと、教室についてです.
言い辛いこともあるとは思いますが・・・(笑)
教室での指導方法について教えてください.
もともと、同じように描いてほしいとは全く思っていないし、「大事な自分の人生、自分で選ぼう♪」「好みの色で、自由に変えながら描いた方が楽しいよ、きっと♪」などと、トールの講師としてはあるまじき姿勢で(笑)、一日セミナー以外のクラスでは、色も素材もアレンジも、「すべて自由♪」にして、生徒さんの思いをくみ取りながら、一緒に考えて仕上げていくことを楽しんでいます。
コピーを目的とするのではなく、大切な自分の時間を使うのだから、あのとき描いてよかった!とのちに思えるような、人と同じでない自分らしさのにじみ出る作品を じっくり育てて欲しいと思っています。 興味のないカリキュラムをこなすより、難しくても、描きたい!と思う作品に挑んでいるときにこそ、心から楽しくがんばれて技術力も上がり、がんばった自分をも愛せる大切な作品になっていくと信じています。うまくいかずに苦しむ場面もあるでしょうが、道はいつも一つではないこと、回り道やでこぼこ道もあって、だからおもしろいっていうこと、そんなことも楽しんでいただけるように最後までしっかり寄り添って一緒に歩いて行くのが 私の仕事だと思っています。「苦しかった」が、いつか「がんばってよかった」と、自分自身を励ますよい思い出として、その方の心の中にあたたかく残ってくれたら本望です。
生徒さんはどれぐらいいらっしゃいますか?
(・・・この質問、必要ですかぁ~? 笑 ! )
みなさん、それぞれにお仕事や介護、お孫さんのお世話、子育て、など、ご事情を抱えていらっしゃるので、長い間お休みしないといけない方や、定期的にはクラスにいらっしゃれない方も多いですが、「お元気ですか?」と感謝を込めて毎年出している 小さなプレゼント付きのクリスマスレターは、120通ほど用意しています。
どのようなタイプの生徒さんが多いですか?
のんびりとマイペースで楽しんで描かれる方が多いです。私が「自分らしさを楽しんで♪」とお勧めするので、慣れている生徒さんは、びっくりするようなアイデアを持ってきてくださったりしておもしろいです(^^)。それに刺激を受けて、他のみなさんも「'自分'を出してもいいんだ~♪」と、だんだん盛り上がってきます(笑)。
仙台教室の生徒さんから押見さんにメッセージが届いております・・・
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押見さん、押見さんのクラスの魅力を教えて下さい.
ただただ楽しくて夢中になって描いていただけで、教室をしようと考えてはいませんでしたが、帰国後、友人に勧めらて、地元のテニスクラブの小さなロビーに作品をいくつか飾らせていただいたところ、何人かの方に「描き方を教えてほしい」と言われ、自分に何ができるんだろうと初めて考えてみました。
もしなにか、私にできることがあるとすれば、自分自身がシアトルでトールに触れてはじめて知った喜びや感動なら、そのまま日本の方にもお伝えできるんじゃないかと思いました。そのころから、'描き方や技術'よりも、'トールを通して気づいてほしいこと'が、私にとっては大切なことでした。
そういう意味で、私の'講師としての在り方'は、日本のトールの教室のそれとは少しタイプが違うと思います。 まず、初級、上級などのクラス分けはしないし、もちろんカリキュラムも認定制度もありません。あまり大事だと思えないからです。必要なのは、前に向くための「やる気」と、ほんの少しの「勇気」だけ(笑)。 一歩踏み出すことができたら、どんどん道は開いていきます♪ それは、トールでなくても同じかもしれませんね(^^)。 そう、私にとってトールは、生徒さん自身が、お家でも会社でも元気を出してがんばれるように応援するための ひとつのツールなのです。
「ほんとだ~!できた~!」「よかった~!直っちゃった♪」「きっと大丈夫ですよね?先生がいるから♪」・・・
はじめは自信無げだった生徒さんたちの笑顔が、だんだん輝いていくのが目に見えてわかります。自信を持って、どんどん積極的になっていくのを見るのは 本当に嬉しいことです。そして、その笑顔に、私自身が今までどれだけ支えられ、パワーをいただいてきたかわかりません。
空の色や雨のしずくの色、陰にある色や黒の中の色・・・ 身の回りにあふれる自然の中で、小さな変化に気づくようになった生徒さんたちは、人生を豊かに受け止めることができていると思います。トールは、そんな生き方を教えてくれる優しくてあたたかい世界です。トールに触れることで、どんどん素敵になっていくみなさんと一緒に、これからも 小さな感動をいっぱい集めていきたいと思っています。
押見素子の思いをまとめた作品集を販売しております.
『 A LETTER FROM EVERGREEN STATE 』 /2014
『 CHERISH YESTERDAY DREAM TOMORROW ともに・・・ 』/2018
2冊を販売しております。
押見素子作品集 VOL.1
“A LETTER FROM EVERGREEN STATE
エバーグリーンステイトからの手紙”
シアトル在住時にトールペイントを始めてから現在に至る約20年間の主要な作品と、その折々の思いをのせてまとめたエッセイ集のような仕上がりになっています。
“トールの描き方本”ではなく「作品集」になりますので、図案・インストラクションは付いておりません。
付録として、収録作品の一部の図案が添付されております。
この作品集を通して、押見素子の素顔とトールペイント楽しさを感じ取っていただければ幸いです。
押見素子作品集 VOL.2
『 CHERISH YESTERDAY DREAM TOMORROW ともに・・・ 』
仙台にご縁をいただいてから早5年、震災から7年が経ちました。
自分自身も人生の区切りの年齢になったこともあり、あの日からただただ祈るように描いてきた作品たちを中心に、変わらず美しくめぐり 私たちを包んでくれる季節の作品を そのときの思いとともにまとめておきたいと思いました。(記:2018年4月)
皆様のお手元においていただけたら幸いでございます。
[押見さんからのメッセージ]
トールに出会ってから、いつのまにか もう30年を超えました。始めたころは、美術学校を出たわけでもなく、デザインを学んだこともなかった 一主婦の私でした。 幼かった子ども達を連れての初めての海外生活、言葉も習慣も全く違う環境で、なんとか子ども達には辛い顔を見せずに、楽しい思い出を作ってあげなくちゃ、と、肩に力ばかり入っていたころです。
子どもに時間のかかる時期でしたし、筆を持つのはいつも、家族が寝静まってからの深夜になりましたが、自分のためだけに時間を使っている感覚が嬉しく、寝不足もなんのその(笑)、いきいきと楽しく充実した日々を送れるようになりました。
シアトルで出会ったトールの先生方は、言葉の通じない未熟な私を、常に笑顔で導き、無謀な挑戦や、確信犯的(笑)なアレンジも、一緒におもしろがって喜んでくれました。日本だったらきっと、いろいろな理由で断られても当然のことを、私の希望に応えて、全力で支えて下さいました。私はいつも 受け入れてもらっている感動で心が弾み、支えていただいている安心感で、次の作品へのやる気が満ち溢れてくるのでした。
シアトルでの楽しかったペイントの日々は、主人の東京への転勤で、1年ちょっとで閉幕となってしまいましたが、その短い間に私の中に降り積もった感動は、根っことなり、力となり、その後におきた いろいろな人生の局面でも、いつも私を支えてくれました。 すでに私の中の一本の柱になっているようです。
上手に描けるように、ではなく、楽しんで描けたかどうか・・・「がんばった自分」を、「がんばろうとしている自分」を、自分自身でちゃんと認めて、好きになれたかどうか・・・自分のなかの ‘らしさ’を、発見できたかどうか・・・
まっすぐ早く進むばかりが 正道ではない。道は いくらでもある。回り道だからこその発見もけっこうあるし、転んでも、よろよろしながら自分のポケットにどれだけたくさんの‘宝物’を拾ってこられたか、のほうが、結果、楽しいかもしれない。
・・・というわけで、クラスではカリキュラムもない、初級~上級などのクラス分けもないし、素材の指定も、色の指定も、したくない♪ 自由に考える苦しさを楽しんじゃお♪ トールの先生としては、‘不良(笑)’かもしれないそんな私ですが、生徒さんみんなが 自分の人生、自分らしく幸せであるように、 その笑顔が光る日まで、とことん全力でおつき合いする気構えは、しっかりと持ち合わせております(^^)v
押見さんは、自宅教室(神奈川)、逗子教室(神奈川)、銀座ソレイユ教室(銀座/東京)、仙台教室(アド・プランツ内)を開講中です.全クラスとも受講生を募集しております.詳細は、押見素子HP http://www.atelier-aya.comまたは、アド・プランツまで直接お問合せ下さい.
アド・プランツ
宮城県仙台市青葉区国分町3丁目4-20 清和ビル303
TEL.022-290-9015/担当.高橋みえ子
押見素子 略歴
認 定
受 賞
その他
公式サイト http://www.atelier-aya.com/
スマートフォンサイト https://aya-evergreen.jimdofree.com/
ブログ http://ameblo.jp/atelier-aya-043/
押見素子さんへのご質問・お問い合わせは、下メールフォームより必要事項をご入力の上、送信してください.
クラフトラボ運営事務局で受信後、責任をもって押見さんにお届けいたします.